こんにちは、「つぶやき」です。
52歳。再出発の場所に選んだのは、紅白旗とヘルメットの世界。
交通警備員になってまだ日は浅いですが、現場に出るたび、これまでの人生で「知らなかった」ことの多さに圧倒されます。
今回は、ある法面(のりめん)工事の現場で私が目撃した光景について書きます。
綺麗事にするつもりも、感動話に仕立てるつもりもありません。
ただ、新米警備員の目に映った、社会を支える「名もなきプロフェッショナル」の横顔を、ありのままに伝えたいと思います。
見上げた先、垂直の岩肌に「人」がいた
その日の現場は、山間部を貫く幹線道路の片側交互通行。 いつものように車を誘導するはずだった私ですが、この日は少し役割が違いました。
道路脇にそびえ立つ、切り立った急斜面。高さは優に20メートルはあるでしょうか。ほぼ垂直に近い、荒々しい岩肌。
そこに、人がいました。2人の作業員の方が、張り付いていたのです。
ハーネスを装着し、たった一本の命綱を頼りに、法面の補強作業をしていました。
私はその日、上の重機オペレーターの方と連携するため、彼らの作業状況をずっと見守る役割を仰せつかったのです。
正直、足がすくみました。
ガードレールも何もない、ただ、ロープが張られているだけの、その向こう側は虚空です。
僕たちが「普通に走る道」は、彼らの「命懸けの仕事」でできている
改めて「法面工事」について調べてみました。 道路や宅地を造る際、人工的にできる斜面(法面)を安定させ、土砂崩れや落石を防ぐための重要な工事です。
放置すれば、いつ大災害につながるかわからない斜面を、彼らは様々な工法で補強・保護します。
- 吹付工: モルタルなどを吹き付け、表面を固める。
- 法枠工: コンクリートの枠を設置し、土砂の流出を防ぐ。
- アンカー工: 地盤深くへアンカーを打ち込み、斜面全体を固定する。
- 植生工: 植物の根で斜面を安定させる、緑化工法。
どの工法も、高所での過酷な作業が伴います。機械だけでは対応できない、複雑な地形を人の手で、体一つでやり遂げる必要があるのです。
国土交通省のデータを見れば、日本の道路法面は膨大で、その維持管理は今も全国各地で続けられています。僕たちが「普通に走れる道」は、こうした、目立たないけれど絶対に不可欠な工事によって、支えられているのです。
「命綱一本」—その重みと、プロフェッショナルの矜持
格好いいとか、尊いとか、そういう使い古された言葉で片付けたくありません。 私が感じたのは、ただ、ただ「すごい」という、純粋な驚嘆でした。そして 感動と感謝・・・
高さ20メートルの岩肌で、重い機材を扱いながら、寸分の狂いもない精度で作業を進める。しかも、一日中。
現場を見ていると、会話は驚くほど少ない。黙々と、ただ黙々と手を動かしています。 土まみれで、汗だく。ヘルメットの下の表情は窺えませんが、その手の動きには、一片の迷いもありませんでした。
何年、何十年と、この「命懸けの現場」で積み重ねてきた時間が、その確かな動きに凝縮されている。僕は、そう思わずにはいられませんでした。
黄色い旗は、彼らの「安全な足場」の一部なんだ
交通警備の仕事を始めて、気づいたことがあります。
工事現場というのは、異なる職種のプロフェッショナルが、同時に動く一つの大きな有機体なのです。
重機を操る人、資材を運ぶ人、測量する人、そして法面に張り付く人。 誰か一人が欠けても、現場は止まります。
私の仕事は地味です。
旗を振って、車を止めて、通す。それだけ。 でも、私が振る旗は、彼らの安全な足場の一部なんだと、この現場で痛感しました。
作業員の方たちが、背後の道路状況を気にせず、目の前の斜面に集中できるのは、道路側の車両を整理している人間がいるからです。
大げさに言うつもりはありません。ただ、現場の誰もが、どこかで誰かの命と安全に責任を負っている。 そのリアルな「連帯」を、私は旗を持つ手から、ひしひしと感じたのです。
52歳、警備員という仕事のリアル。毎日が「社会の特等席」
警備員になる前、私は正直、この仕事をなめていた部分がありました。
「立ってるだけでしょ」「誰でもできるんじゃないの」
でも実際に現場に出ると、全然違います。 天候、交通量、工事の進行状況。
すべてが毎日、刻一刻と変わります。咄嗟の判断が求められる場面もあれば、自分の仕事が現場全体の、そして一般ドライバーの安全に直結しているという、張り詰めた緊張感があります。
52歳で飛び込んだ私ですが、毎日が新しい発見の連続です。
この仕事の一番の報酬は、給料というより、「知ること」そのものかもしれない。最近、本気でそう思っています。
社会の裏側—普段見えていないところで、どんな巨大な力が動いているか。 誰がどんな想いで、どんな仕事をしているか。
それを最も近くで、見届けられる。警備員という仕事は、社会を知るための「特等席」なのかもしれません。
まとめ—「知らない」ことは悪じゃない。でも「知る」と、世界は変わる。
私は、あの法面工事の作業員の方に、直接声をかけることはできませんでした。 現場の流れを止めてはいけないし、僕には誘導の仕事があるから。
ただ、帰り道、いつもの道路が違って見えました。
あの人たちのお陰で、今日も誰かが安全にこの山道を走れている。 それを知っている人が、少しでも増えたらいい。そう思って、この記事を書きました。
あなたは、日常の中で「誰かのおかげ」だと気づいた瞬間、ありますか? もしよければ、コメントで教えてもらえると嬉しいです。
警備員という仕事に興味がある方、転職を考えている方の質問も、僕が知る範囲でお答えします。 僕たちと一緒に、この社会の「特等席」から、新しい景色を見てみませんか?
※この記事は私個人の体験・感想に基づくものです。すべての警備会社・現場に当てはまるわけではありません。法面工事の工法については国土交通省「道路メンテナンス年報」等を参考にしています。
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